2012年の海外SF(その2)2013-01-03 17:51

 あけましておめでとうございます。
 あまり更新できてませんが、本年もよろしくお願い申し上げます。

 さて、前回の続きで、2012年の海外SF(その2)です。範囲は2011年11月~2012年10月末、星五つで評価してます。

 ハヤカワ文庫SFで読んだのは5作。ミリタリーものは読めないので、どうしても少なくなってしまいます。

『冷たい方程式』トム・ゴドウィン★★★
 アシモフ「信念」はそれほど面白いとは思わないが、シェクリイとかシマックとかベスターは今読んでもやはり面白い。むろん表題作は別格。

『都市と都市』チャイナ・ミエヴィル★★★★
 レビュー:http://sciencefiction.asablo.jp/blog/2012/08/18/6545659

『エラスムスの迷宮』C・L・アンダースン★★
 レビュー:http://sciencefiction.asablo.jp/blog/2012/04/

『ボーンシェイカー』シェリー・プリースト★★
 スチームパンク+ゾンビの冒険物語になるのだろうが、いかんせん物語が冗長すぎるし、肝心のボーンシェイカーが全く活躍しない。これでは羊頭苦肉の謗りを免れ得ないだろう。

『シップブレイカー』パオロ・バチガルピ★★★
 これこれ、こういうのを読みたかった! 科学文明が衰退した中で語られるストレートな少年の冒険物語。ジュブナイルとして書かれたので、シンプル過ぎるきらいはあるけれど、『未来少年コナン』を連想させる良質なサイエンス・フィクションである。

 創元SF文庫では1冊。海外SF新刊は、これとビジョルドしか出ていないのだから、少ないのは仕方ないですね。

『連環宇宙』R・C・ウィルスン★★★★
 広げた大風呂敷を見事に畳んで見せた三部作完結編。作者の資質は人間ドラマにこそあるので、想像力が内向きに働いてしまうのは仕方ないのかも。ちょっと綺麗にまとめ過ぎかな。

 というわけで、2012年のベストは以下のようになりました。

①『サイバラバード・デイズ』 イアン・マクドナルド
②『第六ポンプ』 パオロ・バチガルピ
③『都市と都市』 チャイナ・ミエヴィル
④『連環宇宙』 R・C・ウィルスン
⑤『量子怪盗』ハンヌ・ライアニエミ

 さて、今年はどんな年になりますかね。「ビブリア古書店」TVドラマ化もあるし、『たんぽぽ娘』早く出してほしいなあ。

アンビ新年会2013-01-05 19:45

 年二回(夏と冬)のアンビ例会のうち、冬の方(新年会)が昨日4日夜開かれた。今回は日経パソコン編集長中野を迎えて、総勢10名で開催(渡辺4名、T築、H科、M田、H川、H谷)。会場は名古屋駅のスペイン料理屋MARU。なぜかパエリアが釜めしのような入れ物で出てくる不思議なスペイン料理屋であったが、まあ雰囲気は良い店であった。

 夏に行う予定の名大SF研30周年に向けて、ぜひ中野に司会をお願いしようと思ったのだが、中野からは、本来これは現役生がすべき催しであり、われわれが実施するならOB会の30周年の方ではないかという問題提起があり、ちょっと考えさせられた。

 確かにそれはそうなのだが、既に10月のダイナコンで現役生のまとめ役であろうと思われるKくんと現顧問の山田くんには話を通してあり、こちらが会場・場所を決めて告知するという点については、了解を得ている。もちろん企画などについては現役参加で考えてもらってもかまわないわけで、とにかく日程と会場を押さえることが大事と考えられるので、動き始めたわけなのだが、これってマズいのだろうか。とりあえず、動きながら考えるということにしておくので、何かご意見等あれば渡辺英樹までお願いします。

 さて、例会の話題は、11月の「エヴァQ」および「009」の公開を受けて、SFの話題というよりはアニメの話題が多くなる。その勢いもあって、二次会はこのメンバーでは非常に珍しいカラオケに突入(朝子さんを除く9名参加)。最初は前みたいにカラオケBOXだけ借りて話をするのかと思ったら、誰かがロボットアニメメドレーなどを入れ出して、ついつい歌い始めてしまう。すると、もう後は止まらない。音痴なのであまり歌いたくはないのだが、どうしても曲を聞くと歌いたくなってしまうのだ。いや、お恥ずかしい限り。でも楽しかったよ。大学時代のアニソンコンパを思い出してしまった。

 次回は夏、できればSF研30周年行事で会いましょう!

『異邦人たちの慰め』イアン・マキューアン2013-01-07 23:36

 積んどく本読破シリーズ第二弾。1994年に訳されたイアン・マキューアンの第二長編である。なぜ買ってあったのかというと、1995年に訳された第三長編『時間の中の子供』をSFマガジンでレビューしたことがあり、その時の印象が良かったからだ。『時間の中の子供』には少しSF風のところもあったのだが、こちらには全くない。丁寧な描写でじわじわとクライマックスまで盛り上げていく文学的サイコ・サスペンスといった趣である。

 名前は出てこないが、ベネチアとしか思えない観光都市にやってきた一組のカップル(夫婦ではない)。彼らの退廃的な生活がこれでもかといわんばかりの細密かつ視覚的な描写で描かれていく。その中で、もう一組のカップル(こちらは夫婦)と偶然知り合い、彼らの家に招かれ、主人公たちは、その異常な性癖に気づいていく。そして、偶然知り合ったと思っていたのが実は必然であったと気づくとき、恐るべき惨劇が起きる……。

 なんて紹介するとまるで三流ホラー映画のようだが、文章が一流であるため、全体には品格があり、ブッカー賞候補になったというのも肯ける出来栄えだ。情景描写を味わいながら上質なサスペンスが楽しめるので、セリフばかりで周囲の描写の全くないシナリオのような日本の小説(何とは言わないが)に飽きてきた頃に読むと、海外文学の素晴らしさが味わえると思う。