私的名古屋SFファンダム史02(1976-1977)2012-01-15 21:21

 1976年(中学一年生)の12月で忘れられない出来事と言えば、国語の先生(香村という女の先生だった)にハヤカワSFシリーズを借りたことである。ミステリやSFをよく読んでいた方で、こちらが夏休みに読んだ本として『非Aの世界』などを挙げていたら「難しいのを読んでるねえ」と感心してくれた、温厚な良い先生であった。日記を見ると12月22日にブラウン『天の光はすべて星』『SFマガジンベストNo4』小松左京『星殺し』の3冊を借りている。確か「図書館の本を全部読んでから、こういうのは読んでほしいけどね」と言いながら貸してくれたように記憶している。先生、さすがに図書館の本全部は無理だと思います。ブラウンと短編集ということで初心者向けにという意図が感じられなくもないが、多分たまたま持っていた本を貸してくれたのだと思う。当時、本屋からはもはやHSFSは姿を消し、図書館でも新しいもの以外はあまり置いてなかったので、古い銀背をじっくり見たのは初めてだったのだろう。結構感動した覚えがある。特に『SFMベスト』の表紙はお気に入りで、今でもこれを見るとSFを読み始めた頃の瑞々しい気持ちが甦る(ような気がする)。肝心の中身はというと、『ベスト』に載っていた半村良「収穫」と小松左京の月SF「割れた鏡」なんかが印象に残っている程度。ブラウンはひょっとして読まずに返したのでは。「星殺し」や「袋小路」なんかはちょっと中学一年生には難しかったんじゃないかな。

 さて、年が明けて1977年の1月3日、いつも文庫や漫画を買っていた大曽根の本屋(耕文堂)で初めて「SFマガジン」との出会いを果たす。忘れもしない1977年2月号(特集・これがSFだ!)で、表紙はソコロフの宇宙ドーム。多分いつも置いてあったのに、何故かこの時まで気づかなかったのだ。近刊予告で『地球の長い午後』と『発狂した宇宙』を見たときは本当にうれしかったね。これで、『SF教室』で名のみ知っていた作品を読むことができる! 翌日にはお年玉で『地球幼年期の終わり』『分解された男』『沈んだ世界』他バラード6冊、『悪魔の星』『宇宙の小石』など創元をどさどさと買い込んでいる。とにかくSFと見るや何でも買っていたのだ。読む本は全て面白く、未来は無限に輝かしく広がっていた。こうなってくると、読むだけで満足できなくなるのがSFファンの性である。2月22日には、ファングループへの手紙を初めて出している。毎月買っていた「マンガ少年」(「SFマガジン」は立ち読みだけで、まだ買っていなかった)に広告を載せていた「BBFC」というグループで、返信用封筒を送れば会誌がもらえるとのこと。これなら敷居が低そうだと思ったのだ。6日後には早速会誌が送られてきた。しかし、それはたったの紙切れ一枚。日記に「失望したようなうれしいような……」とあるように、複雑な気持ちだった。(続く)

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