鈴木創『なごや古本屋案内』2014-04-29 06:45

 ちょっと古いが、2013年11月に地元名古屋の風媒社から発行された本。中学1年のときから鶴舞・上前津といった名古屋の古書街に足繁く通い、高校生のときには自らの進路を語る3分間スピーチで「古本屋になりたい」と言い切った筆者にとって、本書は見逃せない一冊だ。

「なごや」と言いながら実際には愛知・岐阜・三重を幅広くカバーしているため、本書に登場する古本屋をすべて知っているわけではない。また、自分に興味のある分野は限られているため、実際に本書を見てこの古本屋へ行こうということはあまりないだろう。それでも、本書が読んでいて面白いのは、店主のインタビューを中心としているために、店主の本に対する思い、古本屋への思いが直に伝わってくるところである。多くの同種のガイドブックは、当たり前だが、そこがどんな本屋でどんな本を扱っているかということを中心としている。というか、それしかない場合がほとんどであろう。編著者の鈴木さんは自ら「シマウマ書房」という古本屋の店主であり、他の店主への敬意を払ってインタビューに臨んでいることが文章からもよくわかる。そうか、あの店にはこんな経緯があったのかとか、おお、あの人がこんなところで店を開いているとか、この辺りの古本屋をよく知る者にとっては驚きに満ちているし、そうでない人にとっても、古本屋というものを理解する一助となるはずだ。清水良典、諏訪哲史といった地元在住の評論家、作家が古本屋に関するエッセイを寄稿しているのも読んでいて楽しい企画となっている。SFファンにとっては、地元のBNF岡田正哉氏が30年前の名古屋の古本屋を紹介するエッセイが読めるのがうれしい贈り物だ(高井信さん、ありがとうございます)。

 中学生の頃、なけなしのお金をはたいてCOMを買った山星書店。つたや書店では、SFマガジンのバックナンバーを大量に買い込み、自転車の荷台にくくりつけて帰った。ブラックユーモア全集を揃いで買った大学堂。煙草の匂いがしみついたハヤカワ文庫の中からちょっとでもいいものを選んで買った千代田書店。春日井で営業していた椙山書店が店を閉める時には、本棚をたくさん貰って帰った(今目の前にあるのがそれだ)。海星堂に、自分が作った同人誌が売っていた時にはびっくりしたなあ。シマウマ書房で綺麗なアメージングストーリーズ日本語版を一挙に6冊購入した時は手が震えたよ。想い出を書き出せばきりがない。本書を読むことは、自分にとって人生を振り返る旅でもあった。