オリンピック閉会式について2012-08-14 21:50

 今更ながらロンドン・オリンピック閉会式について書く。もともとオリンピック自体に興味はそれほどなく、開会式にポール・マッカトニーが出ていたのを見逃していたぐらい。しかし、テーマが「シンフォニー・オブ・ブリッティッシュ・ミユージック」というのを後から知ったので、ブリテッィシュ・ロック・ファンの端くれとして、閉会式だけはちゃんと見ようと思っていたのだ。が、やはり最初を見逃し、レイ・デイヴィスとケイト・ブッシュを見損ねてしまう(ペット・ショップ・ボーイズはどうでもいいが、この二人は見たかった)。

 ジョージ・マイケルから見始め、元気なアニー・レノックスにびっくり。演出もなかなか凝っていて、ファッション・モデルが登場する場面にボウイの曲(ファッション)を持ってくるなど、なかなか気が利いている。それにしても、このときのNHKのアナウンサー(解説者?)はひどかった。ネットで「うるさい」などと書かれていたが、問題は「うるさい」ことではない(むしろ、最初は静か過ぎるほどだった)。ブリティッシュ・ロックについて全く「無知である」ことが問題なのだ。アニーが出てきても「アニー・レノックスさんです」で終わり。エド・シーランがピンク・フロイド「Wish You Were Here」のカバーをやっても、一言も説明なし。一緒に演奏しているバンド・メンバーのうち、ニック・メイソンはフロイドのメンバーであるとか、マイク・ラザフォード(ジェネシス)が参加しているとか、曲に合わせて綱渡りの男が登場し、最後に別の男と握手した瞬間にその男から炎が上がったが、これは「Wish You Were Here」のジャケットを再現したものであるとか(ここは見ていてぞくぞくした)、いくらでも解説すべき点はあったというのに、解説はゼロ。何もなし。エリック・アイドルが出てきても「エリック・アイドルさんです」で終わり。モンティ・パイソンのメンバーであることも何も説明なし。

 わかっている人がいろいろ解説してくれるなら、「うるさ」くても全然問題なかったと思う。もちろん、アナウンサーはオリンピックの解説者であって、ロックのことはわかるはずもない。それならば、最初から「シンフォニー・オブ・ブリッティッシュ・ミユージック」というテーマはわかっていたのだから、ロックに詳しい人を呼ぶとか、いくらでも手は打てたのではないか。そして、「無知である」がゆえに、解説者はとんでもないことを始めてしまった。まだ曲が続いているのに、ショーとは何の関係もないオリンピックの振り返りを勝手に話し出してしまったのである! これは流石にひどいと思ったね。オリンピックで体操の演技をしているときに、ロックのことを話しますか? そんなことしたら、絶対に聞いている人は怒るでしょう? 確かに、閉会式はオリンピックの競技とは違う。でも、だからと言って、パフォーマンスを全く無視したおしゃべりを延々と続けるのは、演奏している人と聴いている人に失礼極まりない。これなら黙っていた方がましである。そこを指して「うるさい」と言われたんだろうが、なぜ「うるさ」くなってしまったのか。ショーを無視して話してもいいと判断したからだろう(指示があったのなら、指示を出した人がそう判断したのだ)。なぜ無視してもいいと思ったのかというと、たぶん価値がわからず、どうでもいいと思ったからだ。または閉会式だから、オリンピックを総括しなければという思いが強すぎたのか。ともかく、おおげさに言えば、これはイギリス文化に対する無礼な行為、野蛮な行為である。NHKは大いに反省して、以後はこのような失礼がないようにしてほしいものだ。

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