細田守『おおかみこどもの雨と雪』2012-08-05 23:13

 『おおかみこどもの雨と雪』観てきました。『時かけ』『サマー・ウォーズ』とどちらも面白かったので、細田守監督に対する評価は高いのですが、今回は狼男との間にできた子供をお母さんが育てるという基本設定に最初から疑問符がついていたので、ちゃんと映画になっているのかなという期待半分、心配半分で観てきました。

 日常のディテールを丁寧に描くという特色はいつも通り。ドラマの盛り上げ方も巧く、それないの感動は得られます。しかし、それは狼男との子供が生まれるという前提を素直に受け入れて初めて得られるものであって、最初から最後までその説明がされないままでは、どんなに芝居が丁寧であっても、母と子のドラマに普遍性があっても、心から感動することはできません。少なくとも現代を舞台にするのであれば、ほんの少しでもいいから現代人に納得できる説明(遺伝子工学なり、平行宇宙なり、伝奇ものとしての説明なり)が欲しかったと思います。そうでなければ、いっそ江戸時代か戦国時代を舞台にして民話風に展開するか、または狼抜きで本格ドラマにチャレンジするかすればよかったのではないでしょうか。監督の力量からすれば、それも難しいことではなかったはず。でも、狼抜きでは、あのラストシーンは成り立たないしなあ。現代に狼少女や狼少年が登場するギャップが面白いわけだから時代劇ではダメだし、うーん……。

 ともかく観ながらずっと考えていたのは、狼抜きで何とかならなかったのかということでした。

 作画的には見所なし。『サマーウォーズ』の電脳空間のような爽快感はいっさいない。井上俊之はどこをやっているんだろう? かえって、CG合成の背景とか絵本の場面とか止めのシーンが印象深かった。